コラム-2008.02.19 カルロ・スカルパ

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2008年2月19日~29日
カルロ・スカルパ作品を見るべく北イタリアを訪れました。作品としては下記2点のほか、ヴェローナ銀行、クエリーニスタンパリア絵画館、オリベッティショールーム、ヴェネツィア建築大学、サン・セバスティアーノ教会、ヴェネツィアビエンナーレのベネゼーラ館など。
【カステルヴェッキオ美術館 1964 ヴェローナ】
14世紀に建設された城塞を美術館として再生、スカルパのみならずとも世界で最も秀逸な改修事例のひとつです。第一印象としては、それだけを見ればデコラティブとしか言いようの無いディテールが、ベースにある空間に完全に馴染んでしまっている感じ。もちろん既存部と新たに付加した部分の差別化は明確ですが、そのバランスが巧妙で異物感がまったく無い。何でスカルパはデザインの主張はしっかりしているのに、ここまで「調和」してしまうのかを正確に理解することは不可能。きっとこの地で生まれ、過ごしてこないとこうした巧みの技はできないんだろう、という逃げ腰の結論しか導き出せません。
【ブリオン家墓地 1972 サンヴィト】
スカルパの数少ない完全設計で、建物の機能の面でも経費の面でもほとんど拘束を受け無かったとのこと。見学していた時間帯が、濃い霧に包まれていたこともあり、非常に神秘的な体験でした。スカルパのいつもの建築言語が全体に織り込まれていますが、ほかの作品とは異なりその濃度が極端に高く過剰とも思えるほど。これまでほとんど増改築の設計しかできなかった鬱憤を、遺作ともいえるこの墓碑建築で爆発させたのか。ちなみにスカルパ自身の墓も墓地の一角にあり、そのデザインは息子トビア・スカルパの手によるものです。
スカルパの建築に見られる強いオリジナリティは、生涯ゆるぎなく貫き通されました。そういう意味ではコルビュジエやミースのように作風を時勢に合わせて変えていく器用さに比べ、スカルパは何と不器用なことか。しかしその不器用さが説明抜きで、非常に深いところで人の心をつかむのでしょう。個性とは本来、否が応にもにじみ出てきてしまうものであって、無理やり搾り出すものでは無いはず。言葉のニュアンスはともかく、前者がカルロ・スカルパの建築であり、後者が最近の目立ちたがりの建築であるように思います。そしてそのことは、その建築がどれほど長く愛されるかということで、はっきり白黒がついてしまうのではないでしょうか。

カステルヴェッキオ1カステルヴェッキオ美術館 内観
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