コラム-2008.03.24 ルイス・カーン

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2008年3月24日~4月2日、4月7日~10日
カーンの建築を見るためアメリカの各地を周りました。ルイス・カーンの作品は下記3点以外にリチャーズ医学研究所、ブリティッシュアートセンターなど。
【イエールアートギャラリー 1953 ニューヘブン】
遅咲きと言われるカーンの出世作。イエール大学を中心としたニューヘブンの街は、衰退の一途をたどっているように見えましたが、この一角だけには活力がみなぎっていて、それは多くの有名建築が立ち並ぶこの街の中でこれが一番という答えであるように思いました。素材や形態、構成、その全てにおいて品が良く、写真では過剰なディテールだと思っていた三角錐の天井も、過不足の無い演出で非常に好感が持てます。その他のカーンの公共建築と比較し、この建築が最もやさしく人間的な質の空間でした。
【ソーク研究所 1965 サンディエゴ近郊 ラホヤ】
訪れた日はあいにくの曇り空で、カリフォルニアの青い空のファサードを見ることはできませんでした。施設は非常にオープンなつくりで、中庭はもちろんのこと、ガラス張りの各研究室直前の外部廊下まで自由に見学することができます。それにしても生物医学系研究所という非常に具体的な機能を持っているのに、その空間は神殿と言ってもいいような印象。
【キンベル美術館 1972 フォートワース】
いわずと知れたカーンの代表作。美術館建築の中でも最も評価の高い作品と言えるでしょう。我が恩師、近江栄も最も感動した建築としてこの作品を挙げていたことが思い出されます。前評判から少し構えすぎていたせいもあると思いますが、その空間は予想以上に気高く、パンテオンやロマネスク様式の教会で体感するイメージ。
今回の旅行でいくつかのカーンの作品を見て、他のモダニズムの建築家とは根本的なところで違う気がしました。空間の持つ「強さ」が桁違いで、それは自分だけが持っているルール(正方形へのこだわり、サーブド・サーバントに空間を分ける、中間領域を設ける、ふたつの素材だけで空間を構成するなど)があってのことなのだと思いました。ドキュメント映画「マイ・アーキテクト」の中で、カーンについてインタビューされたI・M・ペイは「幾百の凡作を造っても、たった一つでも傑作を造った建築家には負ける。歴史に残るのは後者の建築家なのだから・・・」と言っていました。応用力と順応性が建築を浅はかなものにするという意味?

キンベル1キンベル美術館 メインエントランスのポルティコ
イエールアートギャラリー1イエールアートギャラリー2イエールアートギャラリー3イエールアートギャラリー4ソーク研究所1ソーク研究所2ソーク研究所3キンベル2キンベル3キンベル4キンベル5キンベル6リチャーズ医学研究所英国美術センター
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