福の香味(かみ)
はじめてのテナント設計でした。通常の設計と違い、法規や構造の問題は少ない代わりに、とにかく時間がなく、忙しなく工程が過ぎ去るという印象でした。オーナーとはイメージの共有だけしっかりして、図面上の検討もそこそこに、あとは現場でスケッチを描いて職人さんと一緒につくっていくという感じです。
デザインのテーマは和モダン。懐石料理の伝統を保持しつつも、新しい食材や調理法にも踏み込むというコンセプトに対応させたものです。また、黒竹を並べて透けた壁とすることで小さな空間に広がりや奥行きを持たせることなどに配慮しました。
引渡しの前日(多分深夜だったと思います)、いつものように現場に詰めて指示を出していたのですが、イメージはしていたつもりの空間がフッと実際にできていることに気が付いて、鳥肌ものでした。